1970年代から日本が主要な捕獲対象としてきたクロミンククジラ資源に対しては、資源動態モデルと単位努力量あたりの捕獲量(CPUE)の変化傾向を利用した絶対量の推定が試みられましたが、その信頼度は低いものでした。 また当時の各国捕鯨船団付属の捕鯨船によって目視調査や標識調査も行われていましたが、いずれも計画的なものではなく、定量的なデータとして不充分でした。 このためIWC/SC内では、捕鯨操業から完全に独立し、新しい理論と調査手法を取りいれた国際ベースの調査を要望する声が強まり、 同資源を対象にIWCが独自に主導するIDCR計画(国際鯨類調査10ヵ年計画:International Decade of Cetacean Research)が、日本の大隅清治博士と南アフリカのピーター・ベスト博士の共同提案としてIWCで承認されました。 IDCRは、1978/79年に第1回調査が開始され、1995/96年まで行われました。
1996/97年度からはクロミンククジラの資源量推定を最優先としながらも、南大洋におけるシロナガスクジラをはじめとする各鯨種の資源、生態、生息環境を調査するSOWER計画(南大洋鯨類生態調査:IWC/ Southern Ocean Whale and Ecosystem Research)へと名称を変更しました。
これらの調査航海によって、南極海における鯨類の分布状況や資源量、生態等に関する情報が蓄積されるとともに、鯨類目視手法の開発やバイオプシー採集に代表される非致死的調査の技術開発にも大いに貢献しました。
SOWERはその後、一定の成果を得て役割を終えたと判断され、2009/10年度をもって終了しました。 2010年からは北太平洋においてIWCの太平洋鯨類生態系調査(IWC-POWER)が実施されています。
・「国際捕鯨委員会/科学小委員会の変遷と日本との関係(VI)IDCR/SOWER南半球産ミンククジラ資源評価航海(その2)」 大隅清治著. 鯨研通信471号. 2016/9.
・「国際捕鯨委員会/科学小委員会の変遷と日本との関係(VI)IDCR/SOWER南半球産ミンククジラ資源評価航海(その1)」 大隅清治著. 鯨研通信469号. 2016/3.
・「2008/09 南大洋鯨類生態系調査(IWC/SOWER)航海を終えて」 熊谷佐枝子著. 鯨研通信442号. 2009/6.
・「南大洋鯨類生態調査(IWC/SC)の現状と将来−クロミンククジラアセスメント航海の27年−」 松岡耕二著. 鯨研通信426号. 2005/6.
・「クロミンククジラを見つけるのは難しいことですか?−条件によって変化する発見難易度について−」 村瀬弘人著. 鯨研通信422号. 2004/6.
・「南半球ミンク鯨アセスメント航海の10年」 笠松不二男著. 鯨研通信374号. 1988/11.