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IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査(POWER)の概要


国際専門目視調査(IWC-POWER)

IWC/日本共同北西太平洋鯨類目視調査(International Whaling Commission Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research、IWC-POWER)は、北太平洋における国際的な鯨類調査であり、IWC(国際捕鯨委員会)が主導し、日本政府(GOJ)との特別なパートナーシップのもと、IWC科学委員会(SC)が設計したものです。この調査計画は、1978年から2010年まで南極海で実施された「IWC国際鯨類調査10カ年計画/南極海鯨類生態系調査(IDCR/SOWER)」の調査シリーズを継承する形で開始されました。IWC科学委員会が調査計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループが調査の立案と結果の分析を主導します。調査航海実施にあたっては、(一財)日本鯨類研究所が水産庁から委託を受け、調査航海を実施します。

IWC-POWERの長期的な目的は、「北太平洋海域に生息する大型鯨類の個体群の状態を把握するための情報(よって、系群構造が本質的に重要である)を提供し、適切な保全および管理措置に必要な科学的基盤を提供すること」です。本プログラムは2010年から実施され、その後、毎年継続して調査が行われています。

この長期目標を達成するために、IWC-POWERでは短期および中期の目標を設定しています。短期目標(フェーズ1)は、「これまでほとんど調査されていなかった」中央および東部北太平洋(東経170度以東)の海域に焦点を当てており、関連沿岸諸国の国内調査計画も考慮されています。この海域は、1970年代の商業捕鯨時代以降、調査が行われていませんでした。現在では、ロシアの排他的経済水域(EEZ)を除いて、これらの海域の多くがカバーされています。中期目標(フェーズ2)はすでにIWC/SCによって合意されており、フェーズ1の成果に加え、今後の調査航海では関係国すべての参加を重視し、一部の年には方法論に特化した調査航海も実施することが合意されています。

当初、本プログラムの開始時に、IWC/SCは既存の知見を踏まえて、鯨種別の中期優先順位リストが作成されました。このリストは、フェーズ2の準備に伴い2020年に更新されています。

IWC-POWERには、研究目標の検討や短期・中期の活動と優先事項の策定、ならびに年次目視調査の設計・実施を担当する技術諮問グループ(TAG:Technical Advisory Group)が設置されています。TAGの報告書はIWC/SCに提出され、承認を受けます。

IWC-POWERの目視調査は、毎年、北半球の夏季に実施されます。短期優先事項(フェーズ1)の調査海域は、北緯20度以北、ベーリング海以南、東経170度から西経135度の範囲であり、アメリカ(U.S. EEZ)およびカナダ(カナダEEZ)の排他的経済水域も含まれています。図1は、2010年から2023年までのIWC-POWERによってカバーされた調査海域を示し、図2は使用される目視専門船およびトラックラインに沿って目撃された鯨類(イワシクジラ)の例を示しています。


Figure1

図1. 北太平洋におけるIWC-POWER調査実施海域(年別)。


Figure2-1
Figure2-2

図2. 目視専門船(上)とIWC-POWER調査のトラックラインに沿って目視されたイワシクジラの発見位置例(下)。


調査に使用される船舶には、ライン・トランセクト法に基づき大型鯨類の資源量を推定するために必要な目視データを収集する機器や装置が備えられています。これはIWC-POWERの主たる研究活動であり、プログラムの長期目標を達成するために不可欠です。また調査要員は、船長や乗組員の支援を受けながら、DNA解析のためのバイオプシーサンプル採取(系群構造の研究)、写真識別および衛星追跡(分布・移動・系群構造の研究)、北太平洋のセミクジラに焦点を当てた音響調査など、その他の調査活動にも従事しています。系群構造の情報は、資源量推定値を解釈するうえで重要な要素です。

フェーズ1の成果に基づき、技術諮問グループ(TAG)は中期優先順位を更新しました。種別および優先順位について、TAGは次のように合意しました。高優先:シロナガスクジラ、ナガスクジラ、北太平洋セミクジラ。中優先:イワシクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラ、ニタリクジラ。低優先:ミンククジラ、コククジラ。超低優先:ホッキョククジラ。

IWC-POWERの調査に参加する科学者は関係国から選出され、TAGによって任命されます。これまでに、アメリカ、日本、大韓民国、メキシコの科学者が調査に参加しています。図4は、2023年のIWC-POWER調査に参加した国際調査員と乗組員の様子を示しています。


Figure3

図3. 2023年IWC-POWER調査の国際調査員と乗組員。



調査海域 航海期間 調査団長 調査員 調査船
2010 北緯40度以北、アリューシャン列島以南、東経170度以東-西経170度以西   2010年7月2日−8月31日 1名(日本) 3名(アメリカ、韓国、日本) 海幸丸
2011 北緯40度以北、アリューシャン列島以南、西経170度以東-西経150度以西(公海及び米国200海里水域を含む) 2011年7月11日−9月8日 1名(日本) 1名(アメリカ) 第三勇新丸
2012 北緯40度以北、米国アラスカ州以南、西経150度以東-西経135度以西(公海及び米国・カナダ200海里水域を含む) 2012年7月13日−9月10日 1名(日本) 3名(アメリカ、韓国、日本) 第三勇新丸
2013 北緯30度以北、同40度以南、西経160度以東、西経135度以西(公海) 2013年7月12日−9月9日 1名(日本) 3名(メキシコ、韓国、日本) 第三勇新丸
2014 北緯30度以北、同40度以南、東経170度以東、西経160度以西(公海および米国EEZを含む) 2014年7月2日−8月30日 1名(日本) 3名(アメリカ、イギリス、日本) 第三勇新丸
2015 北緯20度以北、同30度以南、東経170度以東、西経160度以西(公海および米国EEZを含む) 2015年7月2日−8月30日 1名(日本) 3名(アメリカ、イギリス、日本) 第三勇新丸
2016 北緯20度以北、同30度以南、西経160度以東、西経135度以西(公海および米国EEZを含む) 2016年7月2日−8月30日 1名(日本) 3名(アメリカ、韓国、日本) 第三勇新丸
2017 アリューシャン列島以北、北緯66度以南、西経175度以東、西経157度以西の海域(米国EEZ) 2017年7月3日−9月25日 1名(日本) 3名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2018 アリューシャン列島以北、北緯66度以南、東経170度以東、西経165度以西の海域(米国EEZ) 2018年7月3日−9月25日 1名(日本) 3名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2019 北緯46度以北、アリューシャン列島ならびにアラスカ半島以南、西経170度以東、西経135度以西のアラスカ湾海域の一部(全て米国EEZ) 2019年7月6日−9月28日 1名(日本) 3名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2020 北緯40度以北、東経160度以東、180度以西の外国の排他的経済水域を除いた海域 2020年7月11日−9月24日 前期1名、後期1名(日本) 前期2名、後期2名(日本) 第二勇新丸
2021 北緯40度以北、西経155度以東、西経135度以西の外国の排他的経済水域を除いた海域 2021年8月2日−9月30日 1名(日本) 2名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2022 北緯47度以北から北緯54度以南、東経167度から西経170度間の内で米国の排他的経済水域内 2022年8月2日−9月30日 1名(アメリカ) 3名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2023 米国の排他的経済水域を除く北緯40度以北、180度以東、西経155度以西の海域 2023年7月28日−10月5日 1名(日本) 3名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2024 米国の排他的経済水域のチュクチ海およびベーリング海の一部海域 2024年8月2日−10月10日 1名(日本) 4名(アメリカ、日本) 第二勇新丸
2025 チュクチ海およびベーリング海の一部海域 2025年7月22日−10月9日 1名(日本) 4名(アメリカ、日本) 第二勇新丸


資料

・2011年IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2012年IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2013年IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2014年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2015年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2016年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2017年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2018年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2019年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2020年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2021年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2022年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2023年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2024年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・2025年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について(プレスリリース)

・「国際捕鯨委員会(IWC)による太平洋鯨類生態系調査(POWER)の発足とその実施状況について」 松岡耕二著. 鯨研通信460号. 2013/12.

・「IWC-POWER(太平洋鯨類生態系調査)の現状」 松岡耕二著. 鯨研通信508号. 2025/12.

・写真(IWCホームページ)


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