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2020年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


令和2年9月24日
指定鯨類科学調査法人
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWCでは通称IWC-POWER(IWC-Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。 この調査は2009年度まで南極海で行われていた世界的な成功例として高い評価を得ているIWCの調査計画IWC-SOWER (IWC-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、IWC/SC(科学委員会)の主要研究課題に則って2010年度より実施されています。

昨年までの10年間の調査では、いわゆる商業捕鯨モラトリアムの導入により過去数十年にわたって広域的な鯨類目視調査が実施されていなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されてきました。 また、希少種であるシロナガスクジラやセミクジラの情報も収集されてきました。

今回は、その第11回目の調査航海として、北西太平洋の北緯40度以北、東経160度から180度間の内で外国の排他的経済水域を除いた公海において調査を実施しました。 当初、米国の調査員2名が乗船する計画でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のための入国制限により、本年度は不参加となりました。 今年の調査は、我が国の調査員のみが参加し、大きな支障もなく計画に沿った調査が行われました。


2 調査計画と結果概要

この目視調査は、IWCと日本国政府の共同調査としてIWC/SCがその計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(コンビーナー:松岡耕二・日本鯨類研究所資源管理部門長)が計画の立案と調査の実施を主導しました。 調査は、当研究所が水産庁から委託を受け、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所、国立大学法人東京海洋大学、米国NOAA/NMFS等関係機関と協力しながら実施しました。

本年の調査計画とその結果概要は、以下のとおりです。 結果は9月14日までの集計値となります。 調査海域では、ナガスクジラ、イワシクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラが発見され、同資源の頑健さがあらためて示唆されました。 特に希少種に関しては、後半調査において、シロナガスクジラが多数発見され同資源の順調な回復が示唆されました。 他方でセミクジラの発見はありませんでした。 また、発見鯨に対しては、個体識別写真の撮影やDNA分析用のバイオプシー・サンプル採取を行いました。

調査結果の詳細は、来年のIWC科学委員会年次会議などで発表される予定です。


2.1 主要調査目的

(1) イワシクジラ、ザトウクジラ及びコククジラの詳細資源評価に関する情報収集

(2) 希少種である北西太平洋のセミクジラ及びシロナガスクジラに関する情報収集

(3) 資源情報が不足しているその他の鯨種について資源量と系群構造に関する情報収集

(4) 本調査の中長期計画を策定するために必要な情報収集


2.2. 航海期間

令和2年7月11日−9月24日(76日間)


2.3. 調査海域

北緯40度以北、東経160度以東、180度以西の外国の排他的経済水域を除いた海域(図1)。 調査の中盤に釧路港に寄港し、国際調査員の乗下船や機材込み、燃料補給等を行いました。


2020調査海域図

図1. 2020年の調査海域。


2.4. 国際調査員

前期調査(7月11日―8月17日)

松岡耕二 日本・調査団長・(一財)日本鯨類研究所 部門長

吉村 勇 日本・IWC選任国際調査員

勝俣太貴 日本・ (一財)日本鯨類研究所 研究員


後期調査(8月20日―9月24日)

村瀬弘人 日本・調査団長・国立大学法人 東京海洋大学 准教授

勝俣太貴 日本・(一財)日本鯨類研究所 研究員

藤井壮也 日本・国立大学法人 東京海洋大学 学生


2.5. 調査船 :

第二勇新丸(747トン、(株)共同船舶所属、阿部敦男船長以下17名)


2.6. 総探索距離 :

2,424.1海里(約4,489 km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ22群31頭、ナガスクジラ29群32頭、イワシクジラ131群181頭、ニタリクジラ6群8頭、ザトウクジラ7群8頭、ミンククジラ3群3頭、マッコウクジラ56群90頭、シャチ18群71頭


2.8. サンプル採取結果等:

(1)個体識別写真撮影(個体数)
シロナガスクジラ26頭、ナガスクジラ1頭、ザトウクジラ3頭、シャチ19頭(全49個体)

(2)バイオプシー・サンプル採集(個体数)
シロナガスクジラ13頭、ナガスクジラ9頭、イワシクジラ38頭、ニタリクジラ1頭、ザトウクジラ2頭、シャチ2頭(合計65個体)

(3)鳴音録音
米国の専門家が乗船できず、今回は実施しませんでした。


写真:2020年度調査の様子

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シロナガスクジラからのバイオプシー・サンプル採取 イワシクジラからのバイオプシー・サンプル採取 ザトウクジラの尾びれ(裏側)
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シャチの背びれ アッパーブリッジからのバイオプシー実験風景 調査員と乗組員(釧路港)

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