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2016年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


平成28年8月30日
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国の共同によって実施されているもので、IWCでは通称POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。

この調査は2009年度まで南極海で行われていた世界的な成功例と高い評価を得ているIWCの調査計画IWC/SOWER(International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、2010年度よりIWCと日本との共同で実施されている調査計画です。

昨年までの調査では、過去数十年にわたって広域目視調査が実施されてこなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において、多数のナガスクジラやイワシクジラが発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されました。 今回は、その第7回目の調査航海となり、昨年の調査海域のさらに東側(北緯20度以北、同30度以南)を対象に調査を実施しました。 商業捕鯨時代以降大規模な目視調査が行われていない北東太平洋沖合海域において鯨類の発見がどの程度あるのか、国内外の鯨類研究者からその調査結果が注目されています。 また近年では、長年の懸案であった米国EEZ内でのバイオプシー標本採取が許可されるなど、国際共同調査としての実績を踏まえ、関係国の協力体制がより強化されています。


2 調査計画と結果概要

本目視調査は、IWCと日本国政府が共同して実施するもので、IWC科学委員会が調査計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(議長:東京海洋大学:加藤秀弘教授)の主導の下、水産総合研究センター国際水産資源研究所や米国NOAA/NMFS南西漁業科学センター等関係機関が協力して、具体的な調査航海計画の立案を行いました。 同運営グループは、調査結果の分析についても、これを主導しています。

今回の調査では、北東太平洋沖合海域で60日間の目視調査を実施しました。 このような長期間にわたって広大な海域を対象とする鯨類目視等の調査を実施する能力は、現在のところ日本の鯨類調査船しか有していません。 IWC主導の下、日本の国際貢献として、今後も北太平洋における鯨類目視データの空白海域で調査を行っていくことが、商業捕鯨で大きく減少した鯨類資源の回復動向を知る上で大変重要となります。 調査航海は、水産庁からの委託を受け、(一財)日本鯨類研究所が実施しました。 本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりですが、調査海域等で多数のニタリクジラやマッコウクジラを発見し、同資源の頑健さを確認するとともに、その多くからDNA標本を採取することに成功しました。 調査結果の詳細は来年の5月に開催される予定のIWC科学委員会年次会議にて発表されます。


2.1 主要調査目的:

(1) ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、その他の鯨類の資源量推定

(2) ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ及びマッコウクジラ(及びその他の鯨種)の系群構造に関する情報の収集(特にバイオプシー・サンプル(皮膚組織標本)の採取及び個体識別写真の撮影)

(3) 北太平洋セミクジラ、シロナガスクジラ等希少鯨種のバイオプシー・サンプルの採取及び個体識別写真の撮影


2.2. 調査期間:

平成28年7月2日−8月30日(全60日間)


2.3. 調査海域

北緯20度以北、同30度以南、西経160度以東、西経135度以西(公海および米国EEZを含む)

図1.2016年の調査海域。
調査海域図
2.4. 国際調査員 :

松岡耕二(日本・調査団長・(一財)日本鯨類研究所)
James Gilpatrick(米国・Southwest Fisheries Science Center, NOAA/NMFS, USA)
JiHye Kim (韓国・Cetacean Research Institute, Republic of Korea)
吉村勇(日本・IWC選任国際調査員)


2.5. 調査船 :

第三勇新丸(742トン、共同船舶(株)所属、江口浩司船長以下17名)


2.6. 総探索距離 :

3,443.8海里(約6,378km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ1群1頭、イワシクジラ1群1頭、ニタリクジラ28群32頭、マッコウクジラ32群115頭、アカボウクジラ2群5頭、ハナゴンドウ2群19頭、スジイルカ5群378頭、マイルカ8群217頭


2.8. サンプル採取結果等:

(1)個体識別写真撮影(個体数)
ニタリクジラ14頭、マッコウクジラ7頭

(2)バイオプシー・サンプル採集(個体数)
シロナガスクジラ1頭、イワシクジラ1頭、ニタリクジラ16頭、マッコウクジラ5頭


写真:2016年度調査の様子


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(左から) 写真1.シロナガスクジラの背部(ダルマザメによる楕円形の凹部が多くみられる)  写真2.ニタリクジラの浮上(頭部の主稜線と副稜線が見える)  写真3.マッコウクジラの親子(水面下の親が口を開いている)


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(左から) 写真4.マッコウクジラの頭部(頭部左先端に噴気孔がある)  写真5.浮上したアカボウクジラ  写真6.洋上での集合写真(調査海域にて、IWC調査員と乗組員)


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