調査母船日新丸(8030トン、乗員148名)は、2月15日未明(日本時間0:30)に、南極海のロス海(南緯73度35分、東経175度57分)において、工場甲板部から出火した。 乗組員による消火活動を行ったが火の回りが早く、1:00頃より消火活動と運行要員の31名を残し、他の乗組員は付近に待機していた船団所属の目視採集船に退船した(後にその他の船舶にも移乗)。
この退船準備中に製造員の牧田和孝(27才)さんが行方不明であることが判明した。 火災状況の確認と牧田さん捜索のため、2月17日朝に呼吸具を装着した3名の乗組員が現場に突入したところ、最後に目撃された工場内作業員待機室付近でうつぶせに倒れている牧田さんを発見し、その後、船医により死亡が確認された。
日新丸の救難信号の情報を入手した米国沿岸警備隊の砕氷船と、妨害に来ていたグリーンピースのエスペランサ号より、曳航などの援助申し出があったが、日新丸が自力航行できる可能性が高いこと及び、自力航行できない場合でも僚船の曳航により移動できることが明らかであったため、これらの申し入れを断った。
日新丸は火災鎮火と同時に僚船の支援を受けて復旧活動に努め、2月24日には自力航行が可能となった(写真)。しかしながら、揚鯨用ウィンチや秤等の動作不良や調査実験機器への電力供給が不足していること、調査機材が汚損していること等から調査の継続が困難であると判断し、2月28日に本年度の南極海鯨類捕獲調査を中止することを正式決定した。
なお、一部の外国政府関係者及び海外マスメディアは「日新丸から大量の油が流出する危険がある」、「危険な化学物質を満載している」「機関室が焼け落ちた」などの報道を行ったが、これは事実無根である。根拠のない虚偽の情報により、不幸な事故を環境問題にすりかえて、国際条約に則った正当な調査活動に対していわれのない非難を行う行動は、極めて無責任であり遺憾と言わざるを得ない。