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新南極海鯨類科学調査(NEWREP-A)の概要

NEWREP-Aとは?   ・ 目的   ・ 調査海域・標本実数・使用船舶   ・ 資料



NEWREP-Aとは?

日本政府は、ICJ判決を受けて2014/15年以降のJARPAIIを停止することを決め、ICJ判決を踏まえたICRW第8条第1項に基づく「新南極海鯨類科学調査計画(New Scientific Whale Research Program in the Antarctic Ocean:NEWREP-A)」を策定することとしました。 NEWREP-Aの調査計画は、2014年11月にIWCに提出され、2015年2月に専門家によるレビュー会議、2015年5月にIWC/SCにて議論が行われました。

南極海は特有の海洋生態系を有し、食料やその他の目的に持続的に活用できる豊富な生物資源の場となる可能性を有しています。 近年、南極域における著しい気候変動の影響により生じた海洋環境の変化が、地球環境全体に影響を及ぼしつつあることは周知の事実です。

鯨類資源を持続可能に利用しながら保全し、同時に気候変動等の影響を理解し予測するためには、科学的情報の収集、蓄積及び分析を通じて、南極域の海洋生態系及びその動態を多面的に理解することが重要です。 NEWREP-Aはこのような背景のもとで計画されました。


目的

NEWREP-Aの主な調査目的は次の2つです。

T. RMP(改訂管理方式)を適用したクロミンククジラの捕獲枠算出のための生物学的及び生態学的情報の高精度化

U.生態系モデルの構築を通じた南極海生態系の構造及び動態の研究


これらの目的は、南極における海洋生物資源、特に鯨類資源の持続的利用と保全に関連しています。 RMPとは、IWC/SCがヒゲクジラ類の商業捕鯨の捕獲枠を安全かつリスクが少なくなるように算出して、委員会に管理アドバイスを提供することを可能にするために開発され、厳密にテストされたメカニズムです。 生態系モデルは、南極海生態系の構造及び動態を解明し、理解するために利用されるだけではなく、管理や保全のためにも有用かつ重要なものです 単一種評価手法とそれに基づいた管理方式の予測能力に関しては、近年失望の念が高まりつつあり、生態系(複数種)ベースの手法の開発が行われるに至った主たる原動力となっています。

NEWREP-A計画は、現在海洋生物資源の管理と保全の責務を負った活動を行っている、多くの国際機関において要望されている調査ニーズを十分に反映した2つの調査目的に基づいて策定されました。 また、JARPAIIの調査目的を、明瞭かつ合理的な形でNEWREP-Aの2つの調査目的に統合しました。 例えば、クロミンククジラの系群構造の解明はJARPAIIの調査目的の一つでありましたが、この課題は本来RMPに不可欠な情報であるために、NEWREP-Aでは第一の調査目的の中に取り込まれ、より合理的な形となっています。


第一の主目的は、次のように構成されています:

I(@):g( 0 )と追加分散を考慮したクロミンククジラの資源量推定値の算出

I(A):生物学的及び生態学的パラメータの推定精度改善

I(B):RMP適用のためのIII区からVI区におけるクロミンククジラの系群構造仮説の精緻化

I(C): クロミンククジラにおけるRMP/IST(Implementation Simulation Trials :適用試験)実施のための仕様設定


第二の主目的は、次のように構成されています:

I(I @): 生態系調査(オキアミ資源量推定及び海洋観測)

I(I A):生態系モデル構築のための鯨種毎の資源量推定

I(I B):クロミンククジラの餌生物消費量及び栄養状態の推定

I(I C):生 態系モデルの構築(ヒゲクジラ間の空間的相互作用、捕食者-被捕食者作用及び相対成長論理の検討)


それぞれの主目的には、いくつかの下位目的があります。(調査目的と下位目的は、Research Plan for New Scientific Whale Research Program in the Antarctic Ocean(NEWREP-A)を参照)


調査海域・標本実数・使用船舶

計画標本数は、クロミンククジラ333頭。

NEWREP-Aの調査海域はIWCの管理海区III区からVI区。 JARPAIIではIII区西とVI区東は調査海域に含まれませんでしたが、JARPAIIレビューの勧告(IWC,2015a)に従って、新たに調査海域に含めました。 調査海域の拡張は、拡張海域における過去の系群に関連する科学的情報量と、新たに得られる標本によるRMPへの貢献の可能性を考慮して行われました。 拡張された調査海域は主目的IIとも関連があり、得られるデータは、生態系モデルを構築する目的にも用いられます。

NEWREP-A調査海域図

年度 調査海域 標本実数 使用船舶
2015/16 南緯60度から南極大陸、東経115度から西経170度に囲まれたロス海を含む海域 333 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸
2016/17 東経45度から東経165度間の南緯60度以南の海域 333 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸、第七開洋丸
2017/18 東経165度から西経120度間の南緯60度以南の海域 333 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸、第七開洋丸
2018/19 経度0度から東経115度間の南緯60度以南の海域 333 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸、第七開洋丸

資料

調査計画

科学論文リスト

科学的貢献

「2014/15年度と2015/16年度の南極海第IV区におけるザトウクジラとミナミセミクジラの増加について」 松岡耕二著. 鯨研通信474号. 2017/6.

「新南極海鯨類科学調査計画(NEWREP-A)の概要」 ルイス・A・パステネ著. 鯨研通信469号. 2016/3.

水産庁「捕鯨の部屋」:南極海における新たな鯨類調査計画案

2014年11月 南極海における新たな鯨類調査計画案の概要について 水産庁・外務省


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