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第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)の概要

JARPAIIとは?   ・ 目的   ・ 調査海域・標本実数・使用船舶   ・ 科学的貢献   ・ 成果   ・ 資料


JARPAIIとは?

南極海鯨類捕獲調査は2005年3月の調査船団帰港によって終了しました。 その後、2005年1月に東京でJARPAレビュー会合が開催され、調査結果の詳細な検討が行われました。 南極海のクロミンククジラが北半球のミンククジラと別種であることが明らかにされた、主目的とした南極海のクロミンククジラの自然死亡係数や性成熟年齢等の生物学的特性値やそれらの年変化が推定された、系群構造について2つの系群が調査海域に存在していることが明らかにされた等の様々な調査結果が挙げられました。 また、クロミンククジラ体内に蓄積される重金属やPCBなどの汚染物質は極めて少ないことが明らかにされ、南極海は地球上で最も汚染されていないクリーンな海域の一つであることが判明しました。 このように所期の目的に沿った多くの成果が得られ、クロミンククジラ資源の合理的な管理に大きく貢献する情報がJARPAから得られました。

さらに、JARPAデータから、南極海生態系はナンキョクオキアミを鍵種とする単純な構造をもっており、この生態系の中でオキアミを巡ってヒゲクジラ類の間で競合のあることが示唆されました。 南極海生態系におけるヒゲクジラ類の資源動態を把握して資源の将来予測を行うためには、個々の鯨種の資源解析のみならず、生態系の構成員としての個々の鯨種の位置づけ、すなわち鯨種間関係も併せて考慮する必要のあることが指摘されたのです。

これらの検討結果に基づき、日本政府は鯨類を含む南極海生態系のモニタリングを行って、適切な鯨類資源管理の構築に必要な科学的情報を提供するため、致死的および非致死的手法の双方を含む総合的な調査として第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)を策定しました。 本調査は、引き続き、日本鯨類研究所が政府からの調査実施許可及び財政支援を受けて2005/06年から実施することとなりました。

JARPAIIは、年々変化してゆくクジラ資源の動向や質的変化(個体ごとに見た栄養状態とか妊娠率の変化など)をモニタリングするものであるため、期限を定めず、6 年ごとにレビューを行いながら、必要あれば改めつつ継続してゆく計画となっていました。

しかし、2010年5月に、豪州が「JARPAIIが国際捕鯨取締条約(ICRW)に違反する」として国際司法裁判所(ICJ)に訴え、2014年3月に「JARPAIIはICRW条約8条1項の規定の範疇に入らない」という判決が出されました。 日本政府はこの判決を受け、2014年4月にJAPRAIIを取りやめることを決定しました。(詳細は、「国際司法裁判所」 「南極における捕鯨訴訟」参照)

ICJの判決が出る約1ヶ月前、IWC科学委員会(SC)が加盟国の特別許可による捕獲調査のレビューを行うプロセスに則って、東京で第1節のレビュー会合が開催されました。 IWCの内外から9名の専門家が招聘され、主として調査実施国(日本)が提出した調査成果物である38編の科学論文および調査への批判的立場からのものを含む8編の論文(これらもJARPAII の調査データを使った解析)をもとに、捕鯨、反捕鯨の立場から離れて、純粋な科学的なレビューが行われました。 これら論文と報告書は、当研究所のホームページ、またはIWC のホームページでも掲載されています。


目的

南極海生態系のモニタリング

鯨種間競合モデルの構築

系群構造の時空間的変動の解明

クロミンククジラ資源の管理方式の改善


調査海域・標本実数・使用船舶

計画標本数は、クロミンククジラが850(±10%)頭、ナガスクジラが50頭(最初の2年間はフィジビリティー調査として10頭)、ザトウクジラが50頭(最初の2年間はフィジビリティー調査として0頭)。

JARPA調査海域図

年度 調査海域※ 標本実数 使用船舶
クロミンククジラ ナガスクジラ ザトウクジラ
2005/06 III区東側、IV区、V区西側及び東側の一部 (南緯60°以南・35°E-175°E) 853 10 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第1京丸、第2共新丸、海幸丸
2006/07 V区、VI区西側 (南緯60°以南・東経130°-西経145°) 505 3 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第1京丸、第2共新丸、海幸丸
2007/08 III区東側、IV区、V区西側 (南緯60°・東経35°-東経165°) 551 0 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸、第2共新丸、海幸丸
2008/09 V区、VI区西側 679 1 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸、第2共新丸、海幸丸
2009/10 III区東側、IV区、V区西側及び東側の一部 506 1 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸、第2昭南丸
2010/11 III区東側、IV区、V区及びVI区西側 170 2 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸
2011/12 南緯62度南、東経130度以東、西経145度以西(妨害によって昨年ほとんど調査できなかった海域の補完が目的) 266 1 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸
2012/13 南緯62度南、東経35度〜175度 103 0 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸
2013/14 南緯62度以南、東経130度〜西経145度 251 0 延期 日新丸、勇新丸、第2勇新丸、第3勇新丸
2014/15 南緯60度以南、東経70度〜東経130度(経度60度分) 勇新丸、第2勇新丸

※ 妨害活動及び妨害回避行動等のため、調査できない海域がありました。

2006/07:妨害活動や日新丸火災事故による調査中断によって、V区西側が未調査となりました。

2007/08:V区東側の調査が行えなかった他、IV区東側及びV区西側における目視採集船の調査活動が大幅に制限されました。

2008/09:V区西側やVI区西側の一部で調査が実施出来ませんでした。

2009/10:IV区東側の全域やIII区東側、IV区西側及びV区西側の一部で調査が実施出来ませんでした。

2010/11:V区西側及びこれ以西の海域が未調査となりました。

2011/12:V区東の海域がほぼ未調査となりました。

2012/13:III区東、IV区東、IV区西の北部及びV区の海域は大半が未調査となりました。

2013/14:妨害の影響のため、実際はV区北部東、V区南部東(ロス海)、VI区北部西及びVI区南部西において捕獲調査を実施しました。

2014/15:悪天候が予想以上に続いたため、実際には、南緯60度以南、東経70度〜東経115度(経度45度分)を調査するに留まり、東経115-130度(経度15度分)は今後の課題となりました。


成果


資料

調査計画

クルーズ・レポート

特別許可レビュー

科学論文リスト

科学的貢献

パンフレット

「IWC科学委員会によるJARPAII(2005/06-2010/11)調査結果のレビュー」 ルイス・A・パステネ著. 鯨研通信464号. 2014/12.

「第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)における標本数の算出方法について」 藤P良弘著. 鯨研通信447号. 2010/9.

「2007/08年度第三次JARPAII乗船を終えて」 後藤睦夫著. 鯨研通信441号. 2009/3.

「2006/07南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)に参加して−船内生活を通して見る捕獲調査−」 和田淳著. 鯨研通信437号. 2008/3.


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