当研究所が開発し、鯨類航空調査に運用している小型無人航空機(UAV)関して、下記の通り、メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024 国際ドローン展にて、南極海や北西太平洋上でおこなっている航空調査の紹介と、実際に使用している機体の展示を行うことになりましたので、お知らせいたします。
展示会名称:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024 国際ドローン展
会 場:東京ビッグサイト東展示棟
主 催:一般社団法人日本ドローンコンソーシアム
一般社団法人日本能率協会
鯨類を対象とする資源量、生態系の解明を目的とする調査は、調査船上の熟練観察員たちが双眼鏡を用いて鯨類を発見し、判定することにより鯨類の種別の生息密度を算出するためのデータを収集することを基本としています。しかし、調査船が航行できない南極海のポリニア(氷海の奥に形成された湖状の水域)や、岩礁、漁具の多い沿岸域などが未調査海域となってしまうと、収集データに欠落が生じてしまい、資源量が過小評価となっていた恐れがありました。それを空撮によって補完するため、調査船の甲板から直接離発着するVTOL(垂直離着陸機)を運用することが着想されました。2017 年に基礎研究を開始、2019 年より機体の自主開発を開始し、2022年3月には小型電動UAVとして航続距離日本最長記録を更新するなど、我が国トップレベルの高性能機体の開発に至りました。開発過程においては、南極海を含む遠洋域での過酷な運用条件(極地や船体由来の磁気擾乱、電波干渉、強風、低温、塩害、航行中の調査船の激しい揺れなど)を全てクリアし、広大な海上を長距離自律飛行できるUAV(自律飛行可能な無人航空機:ロボット飛行機)として、VTOL-UAV「飛鳥」は、2023年に実用機として完成するに至りました。
「飛鳥」は昨年度実施した2023/2024JASS-A(南極海鯨類資源調査)において、飛行回数20回(内数回のテスト飛行を含む)、総飛行時間11時間12分、総飛行距離638kmの自律飛行をおこない、南極観測・調査史上例の無い、船舶から離発着する無人航空機による大規模調査をおこなうに至りました。その後、2024年6月にはオホーツク海などで多数のナガスクジラの生息状況の空撮に成功するなど、鯨類調査手法の一つとしての役割を担い、今後とも活用していくことを計画しています。
現在、当研究所が運用中のVTOL-UAV主要目:
名 称 : 「飛鳥」(ASUKA) 改五二型
全 長 : 1,770mm
翼 長 : 2,900mm
全 高 : 820mm
本体重量 : 22.9kg
最大航続距離 : 100km以上
最高速度 : 160km/h(長距離飛行時・巡行速度90km/h)
ペイロード: 最大5kg(2kg搭載時に航続距離100km以上)
耐 航 性: 最大風速15m/sで航行中の船舶からの離発着可能、20m/sで飛行維持可能
(現在、風速10〜15m/sで通常運用中)
開 発 元 :( 一財)日本鯨類研究所
写真1. VTOL-UAV「飛鳥 改五二型」機体
写真2. 調査船から発進し、航空調査に向かうVTOL-UAV「飛鳥」
写真3. VTOL-UAV「飛鳥」から空撮されたニタリクジラの親仔(2024.6.25北西太平洋上)