当研究所がかねてから開発を進めてきた鯨類航空調査用途のUAVに関して、あらたに国産水素燃料電池を搭載して大幅な性能向上を目指す取り組みを開始いたしました。 下記の通り、Japan Drone 2023にて開発成果の発表と機体の展示を行うことになりましたので、お知らせいたします。
展示会名称:Japan Drone2023|第8回 −Expo for Commercial UAS Market −
会期:2023年6月26日(月)〜 28日(水)10:00-17:00
会場:幕張メッセ(千葉市)
主催:一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)
当研究所は、2019年より小型無人航空機(UAV)を活用した、新たな鯨類調査手法の開発を開始し、南極海を含む調査海域において調査船上から運用するため、純国産VTOL-UAV(垂直離着陸型・自律型無人航空機)の開発をすすめてきました。
2021年3月には、北太平洋上において、小型UAVによる当時の飛行距離日本記録となる51kmの目視外自律飛行を達成、2022年3月には飛行距離を104kmまで伸長して再度日本記録を更新注、日本近海でナガスクジラ7群50頭を発見するなど多数の鯨類の生息状況の空撮をおこなってきました。 2023年1月から2月にかけては、2022/2023年度南極海鯨類資源調査(JASS-A: Japanese Abundance and Stock-structure Surveys in the Antarctic)において、世界初となる、南極海において調査船上から離発着をおこなう固定翼無人航空機による航空目視調査にも成功しました。
注)我が国の推進する「空の産業革命に向けたロードマップ」で規定されるレベル3飛行(無人地帯での目視外飛行・補助者の配置無し)の条件における飛行距離国内記録となります(弊所調べ)。
現在、鯨類の目視調査は熟練した目視観察員(複数名)によって、船上からの目視による鯨種や頭数の判定が行われていますが、今後、熟練監察員の不足や目視の限界(鯨類の見逃し等)を補完するUAVの活用が期待されています。 また、UAV の活用により、浅海域や漁具の設置海域、そして南極海のポリニア(定着氷内に形成された池状の開氷域)等の調査船調査が困難な海域においても、上空から目視データや環境データ等を収集することが可能となり、より広範な海気象状況や海域から情報を得て精緻な資源研究が進められるものと考えています。
当研究所が開発してきた機体は、海上の強風や極地の磁気擾乱の下、ワンフライトで最長100kmを超える飛行をおこない、上空から搭載カメラで鯨類の生息状況を撮影することが可能となっていました。
このたび、さらなる飛行距離の伸長と、今後計画している様々な調査機材を多数搭載することにより、鯨類航空調査の精度を向上させることを目標として、国産の水素燃料電池システムを搭載することにより、飛行距離と搭載機器重量の大幅増大を可能とする、次世代の機体開発を開始しました。
現在、この機体は飛行実験機として各種試験をおこなっているころであり、既に開発が進み、鯨類航空調査へ実践投入している機体の後継機とするべく開発を進めております。
新規開発中、の水素燃料給電システム搭載型VTOL-UAV飛行実験機主要目:
名 称 : 飛行実験機 「飛鳥 改五丙二型」(F.T.B. ASUKA Mark V H2)
全 長 : 1,904 mm
翼 長 : 3,335 mm
全 高 : 843 mm
本体重量 : 21.3 kg
本機体は飛行距離100km程度での試験データの収集を予定。
今後の到達目標は、搭載機器重量10kg時に飛行距離200kmを想定し、2024年度末までの実用化を目指します。
なお、Japan Drone 2023には、この機体とともに、本年1月から2月に南極海上で鯨類航空調査をおこなった「飛鳥 改五」(ASUKA Mark V)の実機もあわせて展示いたします。
写真1. 水素燃料給電システム搭載型飛行実験機「飛鳥 改五丙二型」(ASUKA Mk.V H2)
写真2. 南極海において調査船から垂直離昇発進中のVTOL-UAV「飛鳥」シリーズ