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2022年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC/POWER調査航海:調査船の入港−


令和4年9月30日
指定鯨類科学調査法人
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWCでは通称IWC-POWER (International Whaling Commission-Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。 この調査は2009年度まで南極海で行われていた世界的な成功例として高い評価を得ているIWCの調査計画IWC/SOWER (International Whaling Commission/Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、IWC科学委員会(IWC/SC)の主要研究課題に則って、2010年度より実施されています。

昨年までの12年間の調査では、過去数十年にわたって広域的な鯨類目視調査が実施されていなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されてきました。 また、希少種であるシロナガスクジラやセミクジラの情報も収集されてきました。

今回は、その第13回目の調査航海として、アリューシャン列島南側海域(米国の排他的経済水域内:北緯47度以北から北緯54度以南、東経167度から西経170度間の内)を対象に調査を実施しました。 本海域は2010年度にも調査が実施されましたが、今回は新たにバイオプシー実験と鳴音録音実験が行われ、貴重なデータが収集されました。


2 調査計画と結果概要

この目視調査は、IWCと日本の共同調査としてIWC/SCがその計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(コンビーナー:松岡耕二・(一財)日本鯨類研究所参事)が計画の立案と調査の実施を主導しました。 調査は当研究所が水産庁から委託を受け、国立大学法人東京海洋大学、米国NOAA/AFSC(海洋大気庁/アラスカ水産科学センター)等関係機関と協力しながら実施しました。

本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりです。 調査海域ではナガスクジラ、イワシクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラが多数発見され、同資源の頑健さがあらためて示唆されました。 また、調査海域西側では希少種であるシロナガスクジラが多数発見され、同資源の順調な回復も示唆されました。 発見したクジラに対しては、個体識別写真の撮影やDNA分析用のバイオプシー・サンプル(表皮標本)採取、移動及び潜水行動を記録する衛星標識の装着を行いました。 調査結果の詳細はIWC/SC年次会議などの国際会議等で発表されます。


2.1 主要調査目的

(1) イワシクジラ、ザトウクジラ及びコククジラの詳細資源評価に関する情報収集

(2) 希少種であるセミクジラ及びシロナガスクジラに関する情報収集

(3) 資源情報が不足しているその他の鯨類資源について資源量と系群構造に関する情報収集

(4) 本調査の中長期計画を策定するために必要な情報収集


2.2. 航海期間

令和4年8月2日−9月30日(60日間)


2.3. 調査海域

北緯47度以北から北緯54度以南、東経167度から西経170度間の内で米国の排他的経済水域内(図1)。 アラスカのダッチハーバーに寄港して米国調査員の乗下船や調査資材の積み下ろしを行いました。


2022調査海域図

図1. 2022年の調査海域(緑色)とその調査コース(青線)。


2.4. 国際調査員

Laura Morse; 調査団長、米国・IWC選任国際調査員

Jessica Crance; 米国・NOAA/AFSC(海洋大気庁/アラスカ水産科学センター)

勝俣 太貴; 日本・(一財)日本鯨類研究所

吉村 勇; 日本・IWC選任国際調査員


2.5. 調査船 :

第二勇新丸(747トン、(株)共同船舶所属、葛西英則船長以下16名)


2.6. 総探索距離 :

1,064.7海里(約1,972km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ22群24頭、ナガスクジラ56群78頭、イワシクジラ25群27頭、ミンククジラ3群3頭、ザトウクジラ19群54頭、マッコウクジラ41群41頭、シャチ17群86頭


2.8. 実験結果:

(1)個体識別写真撮影(個体数)
シロナガスクジラ16頭、ナガスクジラ7頭、イワシクジラ8頭、ザトウクジラ6頭、シャチ8頭(合計45個体)

(2)バイオプシー実験(採取個体数)
シロナガスクジラ4頭、ナガスクジラ4頭、イワシクジラ6頭、ザトウクジラ2頭(合計16個体)

(3)鳴音録音
33観測点において212時間の音響モニタリングを実施し、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、マッコウクジラ、シャチ等の鳴音録音を行いました。

(4)衛星標識(個体数)
公海においてイワシクジラ1頭に衛星標識(移動並びに潜水行動等を記録)を装着しました。

(5)海洋漂流物
調査海域において8件の海洋漂流物を記録しました。


写真:2022年度調査の様子

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浮上したシロナガスクジラ ザトウクジラのフルークアップ 最も発見が多かったナガスクジラ
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音響観測機器を投下する調査員 国際調査員と乗組員(ダッチハーバーにて撮影)

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