本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWCでは通称POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。 この調査は2009年度まで南極海で行われていた成功例として世界的に高い評価を得ているIWCの調査計画IWC/SOWER(International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、IWC/SC(国際捕鯨委員会/科学委員会)の主要研究課題に則って、2010年度より実施されています。
昨年までの9年間の調査では、過去数十年にわたって広域的調査が実施されてこなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されてきました。 また、希少種であるシロナガスクジラやセミクジラの情報も収集されてきました。 今回は、その第10回目の調査航海として、アラスカ湾(米EEZ内)を対象に調査を実施します。
なお、日本政府は、IWC脱退後も、本プログラムに対する継続的な貢献を表明しています。
本目視調査は、IWCと日本国政府の共同調査としてIWC/SCがその計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループが計画の立案と結果の分析を主導します。 また、当研究所が水産庁から委託を受け、調査航海を実施します。 本年の調査計画の概要は以下のとおりです。
(1) イワシクジラ、ザトウクジラならびにコククジラの詳細資源評価に関する情報収集
(2) 希少種である東太平洋のセミクジラ資源に関する情報収集
(3) ナガスクジラ等の北限に関する情報収集
(4) 過去の捕獲により減少したが現在の資源状況が不明なものを含む、知見が不足している鯨類資源に関する情報収集
(5) 本プログラムの中長期計画の立案に関する情報収集
2019年7月6日−9月28日(85日間)
北緯46度以北、アリューシャン列島ならびにアラスカ半島以南、西経170度以東、西経135度以西のアラスカ湾海域の一部(全て米国EEZ:図1)。 アラスカのダッチハーバー港とコディアック港に寄港して外国調査員の乗下船や調査資材の積み下ろしを行います。
図1.2019年の調査海域(黄色)ならびに調査コース(青太線)。黒色は往復航海のコース。
IWC科学委員会が指名した下記4名の国際調査員によって調査が行われます。
松岡耕二;日本・調査団長・(一財)日本鯨類研究所
James Gilpatrick;米国・NOAA/SWFSC
Jessica Crance;米国・NOAA/AFSC
吉村 勇;日本・IWC選任国際調査員
第二勇新丸(747トン、(株)共同船舶所属、大越親正船長以下18名)
(一財)日本鯨類研究所
写真:過去の調査の様子
シロナガスクジラ (アリューシャン列島沖。2011年) |
ナガスクジラの親子 (アラスカ湾。右顎の白色が特徴。2012年) |
イワシクジラの親子 (アリューシャン列島沖。2011年) |
ニタリクジラの浮上 (ハワイ沖。頭部の主稜線と副稜線が見える。2016年) |
ザトウクジラのブリーチング (アラスカ湾。2012年) |
マッコウクジラの親子 (ハワイ沖。水面下の親が口を開いている。2016年) |
コククジラ (ベーリング海。2017年) |
摂餌中のザトウクジラ (ベーリング海。2018年) |