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2018年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


平成30年9月25日
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWCでは通称POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。 この調査は2009年度まで南極海で行われていた世界的な成功例として高い評価を得ているIWCの調査計画IWC/SOWER (International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、2010年度より実施されています。

昨年までの調査では、過去数十年にわたって広域的調査が実施されてこなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されました。 今回は、その第9回目の調査航海として、昨年に引き続き、ベーリング海を対象に調査を実施しました。 セミクジラを対象とした鳴音録音実験が実施されたほか、アラスカ・ダッチハーバーに寄港して外国調査員の乗下船や調査資材積込み等が行われました。 近年ほとんど調査が行われていないベーリング海中央部において鯨類の発見がどの程度あるのか、また、昨年に引き続き、30数頭しか確認されていない東部北太平洋におけるセミクジラを発見できるのか等、多くの鯨類研究者から注目されていました。


2 調査計画と結果概要

本件目視調査は、国際捕鯨委員会(IWC)と日本国政府の共同調査としてIWC科学委員会がその計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループが計画の立案と結果の分析を主導します。 また、(一財)日本鯨類研究所が水産庁から委託を受け、水産総合研究センター国際水産資源研究所や米国NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター(AFSC)等関係機関と協力しながら調査航海を実施しました。

本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりです。 調査海域では多数のナガスクジラ、ザトウクジラ、コククジラ、マッコウクジラが発見され、そのほとんどからDNA標本が採取されました。 特に希少種であるセミクジラ3群3頭を発見し、個体識別写真の撮影やDNA採取に成功しました。 また、ナガスクジラとザトウクジラの発見数からは、同資源の頑健さがあらためて示唆されました。 調査結果の詳細は明年のIWC科学委員会年次会議にて発表されます。


2.1 主要調査目的:

(1) イワシクジラ、ザトウクジラならびにコククジラの詳細資源評価に関する情報収集

(2) 希少種である東太平洋のセミクジラ資源に関する情報収集

(3) ナガスクジラ等の北限に関する情報収集

(4) 過去の捕獲により減少したが現在の資源状況が不明なものを含む、知見が不足している鯨類資源に関する情報収集

(5) 本プログラムの中長期計画の立案に関する情報収集


2.2. 航海期間:

平成30年7月3日(塩釜出港)−9月25日(塩釜入港)(全85日間)


2.3. 調査海域

アリューシャン列島以北、北緯66度以南、東経170度以東、西経165度以西の海域(米国EEZ)

図1.2018年の調査海域とその調査コース(太線)。
2018調査海域図
2.4. 国際調査員 :

松岡耕二(日本・調査団長・日本鯨類研究所)
Jessica Crance(米国・Alaskan Fisheries Science Center, NOAA/NMFS, USA)
Amy James (米国・IWC選任国際調査員)
吉村勇(日本・IWC選任国際調査員)


2.5. 調査船 :

第二勇新丸((747トン)、共同船舶(株)所属、葛西英則船長以下17名)


2.6. 総探索距離 :

2,370.4海里(約4,390km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

シロナガスクジラ4群7頭、ナガスクジラ132群194頭、ザトウクジラ86群122頭、コククジラ27群88頭、ミンククジラ17群17頭、セミクジラ3群3頭、マッコウクジラ26群27頭、シャチ19群111頭、イシイルカ型イシイルカ58群258頭


2.8. サンプル採取結果等:

(1)個体識別写真撮影(個体数)
コククジラ41頭、セミクジラ3頭、ザトウクジラ39頭、シロナガスクジラ3頭、ナガスクジラ66頭、マッコウクジラ1頭、シャチ16頭

(2)バイオプシー・サンプル採集(個体数)
コククジラ7頭、セミクジラ3頭、ザトウクジラ29頭、シロナガスクジラ3頭、ナガスクジラ22頭、シャチ6頭(合計70個体)

(3)鳴音録音
253観測点において700時間の音響モニタリングを実施し、セミクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ、コククジラ、マッコウクジラ、シャチ等の鳴音録音を行った。


写真:2018年度調査の様子(IWC提供)

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希少種であるセミクジラの噴気
(V字状の噴気が特徴)
浮上したコククジラの群れ
(頭部は体のわりに細く、体色はぶち状の灰色)
ザトウクジラの摂餌
(口の周囲に小魚が見える)
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シャチの群れ 音響調査機器の積込み ダッチハーバー入港中の第二勇新丸

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