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2015年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


平成27年8月31日
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国の共同によって実施されているもので、IWCでは通称POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。

この調査は、2009年度まで南極海で行われていた世界的な成功例との高い評価を得ているIWCの調査IWC/SOWER (International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、IWC科学委員会の主要研究課題に則し、2010年度よりIWCと日本との共同で実施されている調査プログラムです。

昨年までの調査では、過去数十年にわたって広域的調査が実施されてこなかった北緯30度以北海域において、多数のナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ザトウクジラ等が発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されてきました。 今回は、その第6回目の調査航海となり、昨年までの調査海域のさらに南側(北緯20度以北、同30度以南)を対象に調査を実施しました。 商業捕鯨時代以降調査が行われていない北東太平洋沖合海域において鯨類の発見がどの程度あるのか、内外の鯨類研究者からその調査結果が注目されています。 また昨年度から、長年の懸案であった米国EEZ内でのバイオプシー・サンプル(皮膚組織標本)の採集が可能となるなど、国際調査としての実績を蓄積するとともに、関係国の協力体制がより強化されています。


2 調査計画と結果概要

本件目視調査は、IWCと日本国政府が共同して実施するもので、IWC科学委員会が調査計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(議長:東京海洋大学:加藤秀弘教授)の主導の下、水産総合研究センター国際水産資源研究所や米国NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター等関係機関が協力して、具体的な調査航海計画の立案を行いました。 同運営グループは、調査結果の分析についても、これを主導します。

今回の調査では、北東太平洋の公海を対象に60日間の目視調査を実施しました。 このような長期間にわたって広大な海域を対象とした鯨類目視等調査を実施する能力は、現在のところ日本の鯨類調査船しか有していません。 IWC主導の下、日本の国際貢献として、今後も北太平洋における鯨類目視データの空白海域で調査を行っていくことが、鯨類資源の動態を知る上で大変重要となります。 本調査航海は、水産庁からの委託を受け、(一財)日本鯨類研究所が実施しました。 本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりですが、昨年同様、調査海域内で多数のニタリクジラを発見し、同資源の頑健さを確認するとともに、そのほとんどからDNA標本を採取することに成功しました。 調査結果の詳細は明年のIWC科学委員会年次会議にて発表されます。


2.1 主要調査目的:

(1) ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、その他鯨種の資源量推定

(2) ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、ザトウクジラ及びマッコウクジラ(及びその他鯨種)の系群構造に関する情報の収集(特にバイオプシー・サンプル(皮膚組織標本)の採集及び個体識別写真)

(3) 北太平洋セミクジラ、シロナガスクジラ等希少鯨種の個体識別写真撮影及びバイオプシー・サンプルの採集


2.2. 航海期間:

平成27年7月2日(塩釜出港)−8月30日(塩釜入港)(全60日間)


2.3. 調査海域

北緯20度以北、同30度以南、東経170度以東、西経160度以西(公海および米国EEZを含む。)

図1.2015年の調査海域。
調査海域図
2.4. 国際調査員 :

松岡耕二(日本・調査団長・日本鯨類研究所)
James Gilpatrick(米国・Southwest Fisheries Science Center, NOAA/NMFS, USA)
Jessica Taylor (英国・IWC選任国際調査員)
吉村勇(日本・IWC選任国際調査員)


2.5. 調査船 :

第三勇新丸((742トン)、(株)共同船舶所属、大越親正船長以下(17名))


2.6. 総探索距離 :

4,306海里(約7,975km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

ニタリクジラ46群52頭、マッコウクジラ32群93頭、コマッコウ2群5頭、オガワコマッコウ1群6頭、アカボウクジラ5群9頭、タイヘイヨウアカボウモドキ1群110頭、シャチ1群4頭、ハナゴンドウ7群85頭、バンドウイルカ4群36頭、マダライルカ8群531頭、スジイルカ5群279頭、サラワクイルカ2群333頭


2.8. サンプル採集結果等 :

(1)個体識別写真撮影(個体数)
ニタリクジラ43頭、マッコウクジラ37頭、シャチ4頭

(2)バイオプシー・サンプル採集(個体数)
ニタリクジラ34頭、マッコウクジラ1頭、シャチ2頭


写真:2015年度調査の様子


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(左から) 写真1.浮上したニタリクジラの親子  写真2.ニタリクジラのブリーチング  写真3.調査船に接近してくるマッコウクジラの子鯨


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(左から) 写真4.バイオプシー実験風景(海中を遊泳するニタリクジラの親子)  写真6.シャチの群れ  写真7.調査海域の最東端にて(第三勇新丸船首デッキにて)


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