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2008年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII)
−沖合調査日新丸調査船団の出港について−


平成20年6月6日
財団法人 日本鯨類研究所

1. 経緯

北西太平洋とオホーツク海を回遊するミンククジラ(オホーツク海−西太平洋系群)の資源量は、国際捕鯨委員会(IWC)によって、25,000頭と推定されています。 持続的利用が可能な捕獲枠を算出するための改訂管理方式(RMP)をこのミンククジラ資源に適用する際に必要となる系群情報の収集を主目的として、当研究所は日本政府からの特別採捕許可と補助金を受けて、 1994年から1999年まで北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN)を実施しました。 この調査によって、日本列島を挟んだ太平洋側と日本海側のミンククジラが各々独立した繁殖活動を行っている集団(系群)であることが明らかになりました。 また、太平洋側では同一系群であっても、未成熟個体は沿岸に、成熟雄は沖合に、そして、成熟雌は北方のオホーツク海などに棲み別けしている実態が明らかになりました。 さらに、この調査では、ミンククジラが日本漁業の主要対象魚種であるサンマやカタクチイワシ、スケトウダラ、スルメイカ等を大量に捕食していることが明らかになり、また、鯨類の分布と漁場とが重なっていることから、 鯨類と漁業活動との競合関係を強く示唆していました。
このような調査結果から、鯨類を含む水産資源の包括的管理のためには、鯨類及びその餌生物を含めた総合的な調査が必要であることが認識され、JARPNを発展させた第二期調査(JARPNII:通称 ジャルパン・ツー)が計画され、 2000年から実施しています。
このJARPNIIの最優先課題は、鯨類が消費する餌生物の種類や量、鯨類の餌生物に対する嗜好性などを調べて鯨類の摂餌生態を解明するとともに、 それらの相互関係を基にした生態系モデルの構築を進めて、鯨類を含む日本周辺の水産資源の包括的管理に貢献することです。
そのため、捕獲調査対象鯨種を、従来のミンククジラ(体長8m、資源量25,000頭)に加えて、ミンククジラより大型で総生物量も大きく、 その捕食量が生態系に与える影響が大きいと推定されるニタリクジラ(体長13m、資源量25,000頭)やマッコウクジラ(体長雄15m・雌11m、資源量102,000頭)、 更にミンククジラの資源量を超えるまでに回復してきていることが最近明らかになったイワシクジラ(体長14m、資源量69,000頭)を含めました。 また、鯨類が利用している餌生物の分布や存在量を推定するため、計量魚探や中層トロールを装備した調査船を用いて、鯨の捕獲調査と併行して餌環境調査を行っております。
JARPNIIでは、こうした鯨類の摂餌生態調査の他に、鯨類や海洋生態系への化学汚染物資の影響の把握や、各鯨種の資源構造の解明にも引き続き取り組んでいます。
今回出港する日新丸船団は、JARPNIIの沖合域調査を担当していますが、この他、沿岸域の捕獲調査(春季に三陸沖、秋季に釧路沖)がJARPNII計画の下で実施されており、主に小型捕鯨船が担当しています。
我が国が実施している捕獲調査は、国際捕鯨取締条約(ICRW)の第8条(別記参照)によって締約国の権利として認められている正当な科学調査です。 また、漁業資源の適切な管理の実現に向けた鯨類調査の実施の必要性は、国際連合食糧農業機関(FAO)の水産委員会でも強く支持されています。


2.調査計画概要

JARPNIIは、国際捕鯨取締条約に基づいて当研究所が政府の許可を受けて実施しており、2000年より2年間の予備調査を経て、2002年より本格調査を実施しています。 本年調査計画の概要は以下のとおりです。


2.1 調査目的:

(1) 鯨類の摂餌生態、生態系における役割の解明

(2) 鯨類及び海洋生態系における海洋汚染の影響の把握

(3) 鯨類の系群構造の解明


2.2 調査期間(日新丸船団):

平成20年6月6日に日新丸は東京港より、勇新丸および第二勇新丸は下関港より、第三勇新丸は瀬戸田港より出港し、合流後、捕獲調査を開始します。 帰港は現在のところ8月下旬を予定しています。 また、目視調査と餌環境調査に従事する調査船海幸丸は、7月1日に塩釜港を出港して、調査期間の一部は捕獲調査船団と連携をとりながら目視調査並びに餌環境調査を実施し、8月31日に塩釜港に入港する予定です。
同様に、独立行政法人 水産総合研究センター 遠洋水産研究所所属の調査船俊鷹丸は、7月15日に清水港を出港して、捕獲調査船団と連携をとりながら餌環境調査を実施し、8月6日に清水港に入港する予定です。
捕獲調査とは別に、調査船第二共新丸が目視調査(一部餌環境調査)に従事するため、7月1日に塩釜港を出港して、8月30日に塩釜港に入港する予定です。また、海幸丸も調査期間の一部は捕獲調査とは別に、 目視調査(一部餌環境調査)に従事する予定です。


2.3. 調査海域:

北緯35度以北、日本沿岸から東経170度までの北西太平洋(7、8、及び9海区)の一部海域


調査海域図
図1.2008年北西太平洋鯨類捕獲調査における調査海域

2.4. 調査員(日新丸船団) :

調査団長 田村 力((財)日本鯨類研究所 研究部 生態系研究室室長)
日本鯨類研究所より 田村 力  他14名
遠洋水産研究所より 渡邊 光  他2名


2.5. 調査船と乗組員数(含む調査員):

調査母船 日 新 丸 ( 8,044トン  小川 知之 船長以下131名)
目視採集船 第三勇新丸 (  742トン  三浦 敏行 船長以下21名)
目視採集船 第二勇新丸 (  747トン  佐々木 安昭 船長以下21名)
目視採集船      勇 新 丸 (  720トン     廣瀬 喜代治 船長以下21名)
餌環境調査/目視専門船 海 幸 丸 (  860.25トン  新屋敷 芳徳 船長以下25名)
餌環境調査船      俊 鷹 丸 (  887トン  寺田 靖 船長以下28名)


捕獲調査とは別に、上記の海幸丸が同海域において鯨類を対象とした目視調査及び餌環境調査を実施する予定です。 また、第二共新丸(372トン 竹下 湖二船長以下21名)が同海域において鯨類を対象とした目視調査(一部餌環境調査)を実施する予定です。


2.6. 標本採集頭数:

本調査において予定されている標本数は次の通りです。
ミンククジラ  100頭
イワシクジラ  100頭
ニタリクジラ   50頭
マッコウクジラ  10頭

この他、ミンククジラを対象とした沿岸域調査を、秋に釧路沖で実施する予定になっています(標本採集予定数は60頭)。


2.7. 実施機関:

財団法人 日本鯨類研究所
独立行政法人 水産総合研究センター 遠洋水産研究所


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