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2001/2002年度南極海鯨類捕獲調査(JARPA)の結果について

平成14年4月4日
財団法人 日本鯨類研究所

南極海における鯨類捕獲調査は、国際捕鯨取締条約第8条に基づいて当研究所が政府の許可を受けて実施している調査です。 1987/88年に実施した調査理論の実行可能性調査から数えて15度目となった南極海鯨類捕獲調査は、国際捕鯨委員会(IWC)の管理海区である第IV区(東経70度〜東経130度)及び第V区(東経130度〜西経170度)を隔年で交互に繰り返しながら長期間継続的に調査を行うように計画され、ライントランセクト法に基づく目視調査と、無作為抽出法による南極海産ミンククジラの標本採集とを併用した調査活動を行っております。 また、対象とする鯨種の系統群の分布範囲を把握するために、1995/96年より隣接する第III区及び第VI区の一部で同様の調査が組み込まれております。

採集されたミンククジラの標本は、調査海域における年齢や性別による組成や棲み分け及び自然死亡率等を調べるために用いられるほか、形態・回遊・繁殖・成長・生理・生態系及び海洋環境といった多岐に亘る項目について、貴重な情報を解析するために活用されております。 これまでの調査結果から、索餌場となっている南極海に集まるミンククジラの生物学的特性や分布並びに回遊生態は、当初予想したほど単純なものでなく、生態系や海洋環境と複雑に関係していることが判ってきました。 この捕獲調査が始まるまでは、IWCが決めた6つの管理海区毎に個別の繁殖集団(系統群)が存在すると考えられておりましたが、その後の調査によりDNAなどの遺伝学的情報の解析結果から、実際には第IV区と第V区には同一系統群が東西に広く分布し、また隣接する第III区や第VI区にもこの系統群が存在する可能性が示唆されるようになってきました。 自然死亡率や加入率等の生物学的特性値は、系統群毎に異なる可能性があり、それぞれの系統群全体の資源構造を把握する必要があります。 1995/96年から調査海域を拡げたのは、そうした事情によるものです。 また、鯨類の生活環境を知るために海洋構造や餌生物環境を把握する必要があることから、海洋観測や餌生物の種類や資源量推定のための計量魚探調査も併行して実施しております。

本年度の調査は天候に恵まれ、一昨年の同海域調査で得られたミンククジラの発見記録(1,773群7,559頭)に匹敵する、2,289群5,460頭の発見を得ることが出来ました。 発見群数では、これまでの調査における新記録です。 ミンククジラの発見は一昨年同様にIV区の南部東海域及びプリズ湾で非常に多く、氷縁近くに高い密度で集団を形成していることが観察されました。

またザトウクジラは、一昨年を大きく上回る1,356群2,656頭の発見がありました。 ザトウクジラの発見数は、調査を行う毎に急速に増大しており、その発見分布は沖合で密度が高く、氷縁際で密度の高いミンククジラとの棲み分けが特徴的です。 目視調査ではこの他に、ナガスクジラの発見数も過去最高を記録しました。

今次調査では、目視採集調査活動の他に、大型ヒゲクジラの個体識別用写真撮影や、セミクジラ16個体をはじめとする4種52個体からのバイオプシー標本採取に成功するなど、非致死的調査も積極的に行いました。 また長期間広範囲に亘って南極海に滞在する利点を活かして、計量魚探やXCTD、EPCSなどの観測機器類を用いた海洋環境調査を行いました。

調査船団は反捕鯨団体グリーンピースの約1ヶ月にわたる執拗な妨害を受けましたが、一致団結してこの妨害を跳ね返し、調査活動への影響も軽微なもので済みました。 海洋生態系の保護と称しながら、調査活動の妨害活動を自己宣伝の手段として利用しているグリーンピースの卑劣な行動は決して容認されるものではなく、当研究所は日本政府と共に、繰り返して強い抗議を行っています。


調査概要


(1)調査目的

1.南極海産ミンククジラの資源管理を向上させるための生物学的特性値の推定
2.南極海産ミンククジラの資源管理を改善するための系群構造の解明
3.南極生態系における鯨類の役割の解明
4.鯨類に対する環境変化による影響の解明

(2)航海日数

平成13年11月6日(出港)〜 平成14年4月4日(入港)  150日間

(3)調査日数

平成13年11月29日(開始)〜 平成14年3月9日(終了) 101日間

(4)調査海域

南緯58度以南の南極海第III区東側(東経35度〜東経70度)と南緯60度以南の南極海第IV区(東経70度〜東経130度)。第III区東側については第IV区調査の前後に2回調査を行った。また、南緯30度以南の海域では往復航海中に目視調査を実施した。

調査海域図

(5)総探索距離

19,767.4マイル

(6)主たる鯨種の発見数(海区移動を含む1次、2次発見の合計)

ミンククジラ      2,289群 5,460頭(発見群数で新記録)
シロナガスクジラ       21群   31頭
ナガスクジラ      177群 1,122頭(新記録)
ザトウクジラ      1,356群 2,656頭(新記録)
セミクジラ          20群   28頭
マッコウクジラ      298群  302頭
ミナミトックリクジラ     130群  235頭
シャチ           93群 1,099頭

(7)標本数(ミンククジラ)

第III区東 110頭
第IV区  330頭

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