世界の様々な国や地域では、それぞれが独自の社会や文化、慣習等を持っています。日本での鯨の利用は約9000〜6000年前の縄文時代にまで遡るとされています。当時は捕鯨技術がなかったと思われることから、主に座礁した寄り鯨を利用したと考えられますが、その後約5000年前からは沿岸に回遊してくるイルカ類の捕獲を始めたとされています。海洋民である日本人と鯨類の関係は深く、貴重な海からの恵として古くから利用されてきました。
その後、世界では鯨油が燃料や潤滑油という戦略的物資となったことから、鯨油生産のため大型鯨類が乱獲され、大型鯨類資源が枯渇しました。最後の主要漁場であった南極海でも、各国の間で「捕鯨オリンピック」とよばれる過当競争が起こり、さらなる資源の枯渇に至りました。適切な資源管理のため実施された捕獲規制により、鯨油のみの生産では採算割れしたこと、その後石油の発見により鯨油の必要がなくなったことから、ほとんどの国が捕鯨から撤退しました。多くの国では鯨はもはや資源とはみなされなくなりました。
1960年代から70年代頃に台頭してきた環境保護や動物の権利についての関心が欧米で高まる中、突如鯨が環境保護のシンボルとして登場し、「鯨一頭救えずして、環境は守れない」という旗印の下で保護団体による反捕鯨運動が展開されました。大規模な「鯨=絶滅の危機」という単純明快メッセージの下で「鯨を守ろう」キャンペーンが長年展開され、反捕鯨世論が形成されました。鯨類の資源管理機関である国際捕鯨委員会でも1982年に鯨類資源の不確実性を根拠として、「商業捕鯨モラトリアム」が採択されるに至りました。保護派の多くは資本主義による利潤の追求が過去の環境破壊や資源の枯渇を引き起こしたとして、特に「商業捕鯨=悪」の盲目的な信念から、厳格な資源管理制度である改訂管理方式(RMP)が確立した現在も、いまだに捕鯨に反対しています。
現在商業捕鯨を続けている国は食糧生産が目的で過去の鯨油生産とは異なります。現在大型鯨類の捕獲を行っているのはアイスランド、ノルウエー、日本、アメリカ、ロシア、デンマーク(グリーンランド)、セントビンセント及びグレイナディーン諸島、カナダ、インドネシアという少数の国のみとなりました。海洋国家として水産資源に依存している日本の伝統ある捕鯨の歴史や文化、水産資源である鯨の調査やその持続可能な利用についての正しい情報発信を英語圏で行うため、インターネットメディアを活用し、「素顔の日本を良質な英語で世界に発信し、日本と日本人をより良く理解していただくための英語ニュースオピニオンサイト」であるJapan Forwardの中に、捕鯨とその関連課題に関する特設サイト「WHALING TODAY」を開設し、逐次情報を発信しています。