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2000年北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII)

平成12年7月29日
財団法人 日本鯨類研究所

1.経緯

日本列島の北東に位置する北西太平洋とオホーツク海を回遊するミンククジラ(オホーツク海系統群)の資源量は、国際捕鯨委員会(IWC)によって、25,000頭と推定されています。この資源に悪影響を及ぼすことなく捕獲枠を算出させる改訂管理方式(RMP)の適用に際して必要な系群構造に関する情報を得ることを目的に、1994年から北西太平洋においてミンククジラ捕獲調査(JARPN)を実施してきました。1996年からは摂餌生態の解明を目的に加えたこのJARPN調査は、1999年までの6年間実施され、日本列島を挟んだ太平洋側と日本海側のミンククジラは各々独立した繁殖活動を行っている集団(系統群)であることを証明したほか、同じ集団(オホーツク海系統群)に属していても、日本の沿岸と沖合並びにオホーツク海とで年齢や性による棲み別けをする傾向が強いこと、更にはこの集団が、サンマやイワシ等を主として食べており、しかも量的にも場所的にも漁業と競合していること等を明らかにしました。

こうした鯨類による海洋生物資源の捕食量は世界的にみると海面漁業生産量の3〜5倍になると推定されております。JARPNの結果を受けて日本周辺海域においても鯨類を含めた水産資源の複数種一括管理の必要性が強く認識されるようになりました。また、今年2月にJARPN調査の成果を包括的に評価して、調査がその目的を達成しているか否かを検証するIWC科学委員会の作業部会が東京で開催されました。この会合では「JARPN調査が収集した情報は、北太平洋ミンククジラのRMPの適用試験の改良に有用であったし、これからも有用であることから、北太平洋ミンククジラの管理に寄与するものである。」との結論がなされました。このようにその成果が高く評価される一方、同会合では、ロシアの許可が出ずに未調査となっている12区(オホーツク海)を含め、8区・9区(北太平洋の沖合海域)からのミンククジラの遺伝学的標本を引き続き採集することや、鯨類の餌生物の分布並びに豊度の調査が重要であり、そのために計量魚探や中層トロールによる調査も並行して実施すること等が勧告されました。

これらの問題点を解明するためにJARPNを第二段階へと発展させる調査JARPNIIが計画されました。本年度と来年度の2年間は、その実行可能性を探るための予備調査を実施します。JARPNIIで最も優先される課題は、鯨類の餌として消費される生物種の量や嗜好性を調べて鯨類の摂餌生態を解明するとともに、それらの相互関係を基にした生態系モデルの構築を進めて鯨類を含む海洋生物資源の複数種一括管理に貢献することにあります。従来のミンククジラに加えてニタリクジラやマッコウクジラの採集を計画したのは、この両種は大型で、個体の捕食量が大きいばかりでなく、資源量も多い(ニタリクジラ22,000頭、マッコウクジラ105,000頭)ことから、海洋生態系に及ぼす影響がミンククジラを遙かに凌ぐと想定されるからです。その他生態的地位が無視できないツチクジラ、コビレゴンドウ、イシイルカの3鯨種については商業レベルで捕獲されておりますので、そこから得られる資料を活用することにしています。こうした摂餌生態の解明の他に、それぞれの鯨種の資源構造の解明や、汚染物質が海洋生態系に及ぼしている影響の解明にも引き続き取り組んでいくことにしております。ニタリクジラやマッコウクジラの捕獲は1988年以降中断されておりましたが、この期間にDNAに代表されるように種々の分析技術が発展しており、資源構造や汚染に関する新しい情報の入手が期待されます。

この科学目的のための捕獲調査は、国際捕鯨取締条約第8条によって締約国の権利として認められているものであります。


2.調査計画概要

(1)調査目的

北西太平洋における鯨類の1.摂餌生態の解明、2.系群構造の解明、並びに3.汚染物質の蓄積分析による海洋汚染調査を実施する。

(2)調査期間

平成12年7月29日〜平成12年9月下旬

(3)調査海域

北西太平洋北緯35度以北、日本沿岸から東経170度にかけた北太平洋(7,8,9海区)。ただし、オホーツク海並びに外国の200海里水域は除く。

調査海域図


(4)調査員

調査団長 藤瀬良弘((財)日本鯨類研究所 研究部長)
(財)日本鯨類研究所より 藤瀬良弘 以下9名
水産庁遠洋水産研究所より 川原重幸 以下4名

(5)調査船と乗組員数(含む調査員)

調査母船    日新丸(7,575トン 成田英憲 船長 以下109名)
目視採集船   勇新丸( 720トン 阪井一志 船長 以下18名)
〃       第1京丸( 812トン 松坂 潔 船長 以下22名)
〃       第25利丸( 740トン 小宮博幸 船長 以下22名)
目視専門船   第2共新丸( 368トン 亀井秀春 船長 以下22名)
トロール調査船 俊鷹丸( 396トン 飯田惠三 船長 以下28名、水産庁遠洋水産研究所)

(6)標本採集頭数

ミンククジラ100頭、ニタリクジラ50頭、及びマッコウクジラ10頭を各々上限とする。

(7)実施機関

財団法人 日本鯨類研究所
水産庁遠洋水産研究所

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