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2017年度IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査の終了について
−IWC-POWER調査航海−


平成29年9月25日
(一財)日本鯨類研究所


1 経緯

本調査はIWC(国際捕鯨委員会)と我が国が共同で実施しているもので、IWCでは通称POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research )と呼ばれています。 この調査は2009年度まで南極海で行われていた世界的な成功例として高い評価を得ているIWCの調査計画IWC/SOWER (International Whaling Commission-Southern Ocean Whale and Ecosystem Research:南大洋鯨類生態系調査、1996/97年度〜2009/2010年度)での経験と実績を踏まえ、そのノウハウ等を活用して、2010年度より実施されています。

昨年までの調査では、過去数十年にわたって広域的調査が実施されてこなかった北緯40度以北のアラスカ湾海域において多数のナガスクジラやイワシクジラが発見されたほか、北緯40度以南の海域では多数のニタリクジラやマッコウクジラが発見され、客観的な資源評価に貢献する貴重なデータが収集されました。 今回は、その第8回目の調査航海として、米国政府の多大な協力の下に新たにベーリング海を対象に調査を実施しました。 新たな試みとして、セミクジラを対象とした鳴音録音実験が新たに追加されたほか、アラスカ・ダッチハーバーに寄港して外国調査員の乗下船や調査資材積込み等が行われました。 近年ほとんど調査が行われていないベーリング海において鯨類の発見がどの程度あるのか、特に30数頭しか確認されていない東部北太平洋におけるセミクジラを発見できるのか等、世界中の鯨類研究者から注目されていました。


2 調査計画と結果概要

本件目視調査は、国際捕鯨委員会(IWC)と日本国政府の共同調査としてIWC科学委員会がその計画の策定を行い、同委員会内に設置されたPOWER運営グループ(コンビーナ:東京海洋大学加藤秀弘教授)が計画の立案と結果の分析を主導します。 また、(一財)日本鯨類研究所が水産庁から委託を受け、水産総合研究センター国際水産資源研究所や米国NOAA/NMFSアラスカ漁業科学センター(AFSC)等関係機関と協力しながら調査航海を実施しました。

本年の調査計画とその結果概要は以下のとおりです。 調査海域において目視探索距離・計1,990 海里を探査し、多数のナガスクジラ、ザトウクジラ、セミクジラ、コククジラ、マッコウクジラが発見され、そのほとんどからDNA標本が採取されました。 特に希少種であるセミクジラ7群15頭を発見し、個体識別写真の撮影やDNA採取に成功したことは特筆すべき成果となりました。 また、ナガスクジラとザトウクジラの発見数からは、同資源の頑健さがあらためて示唆されました。調査結果の詳細は明年のIWC科学委員会年次会議にて発表されます。


2.1 主要調査目的:

(1) イワシクジラ、ザトウクジラならびにコククジラの詳細資源評価に関する情報収集

(2) 希少種である東太平洋のセミクジラ資源に関する情報収集

(3) ナガスクジラ等の北限に関する情報収集

(4) 過去の捕獲により減少したが現在の資源状況が不明なものを含む、知見が不足している鯨類資源に関する情報収集

(5) 本プログラムの中長期計画の立案に関する情報収集


2.2. 航海期間:

平成29年7月3日(下関出港)−9月25日(横須賀入港)(全85日間)


2.3. 調査海域

アリューシャン列島以北、北緯66度以南、西経175度以東、西経157度以西の海域(米国EEZ)

図1.2017年POWER航海の調査海域とその調査コース(太線)。
2017調査海域図
2.4. 国際調査員 :

松岡耕二(日本・調査団長・(一財)日本鯨類研究所)
Jessica Crance(米国・Alaskan Fisheries Science Center, NOAA/NMFS, USA)
Jessica Taylor (米国・IWC選任国際調査員)
吉村勇(日本・IWC選任国際調査員)


2.5. 調査船 :

第二勇新丸((747トン)、共同船舶(株)所属、葛西英則船長以下17名)


2.6. 総探索距離 :

1,989.9海里(約3,685km)


2.7. 主要な発見鯨種 :

ナガスクジラ145群198頭、ザトウクジラ136群165頭、ミンククジラ17群20頭、コククジラ15群22頭、セミクジラ7群15頭、マッコウクジラ25群33頭、シャチ32群134頭、イシイルカ型イシイルカ29群149頭


2.8. サンプル採取結果等:

(1)個体識別写真撮影(個体数)
コククジラ14頭、セミクジラ12頭、ザトウクジラ34頭、ナガスクジラ55頭、シャチ56頭

(2)バイオプシー・サンプル採集(個体数)
ナガスクジラ28頭、ザトウクジラ18頭、コククジラ9頭、セミクジラ3頭、シャチ2頭(合計60個体)

(3)音響機器による鯨類の鳴音録音
合計240観測点において合計約841時間の鳴音モニタリングを実施した。


写真:2017年度調査の様子(IWC提供)

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希少種であるセミクジラの群れ
(アーチ状の上顎が見える)
浮上したコククジラ
(頭部は体のわりに細く、体色はぶち状の灰色)
ナガスクジラの頭部(奥側)と背ビレ
(ダイアトムの付着により体色が茶色に見える)
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トップマストからのバイオプシー実験風景
(画面下の船首台に射手2名が見える)
音響調査機器の積込み
(アラスカ・ダッチハーバー港)
第二勇新丸全景
(ダッチハーバー入港中)

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